虹芝寮から近い山域であるが、あまり知られていない静かな山があるので紹介したい。谷川岳を盟主とする上越国境稜線の南側に広がる阿能川岳や小出俣山は訪れる人も少ない山域である。上越国境稜線のオジカ沢の頭から爼倉山稜を経て谷川乗越の南側に小出俣山がある。小出俣山は谷川岳の前衛峰ともいえる位置にあり東に阿能川岳、西に三尾根岳を領袖として1,749mを頂点としている。虹芝寮整備の後、すずもりの湯に立ち寄ることがある。すずもりの湯を囲む山々はこの山域の尾根の末端である。すずもりの湯からさらに登ること6kmで仏岩越の入り口がある。今は赤谷越と呼ばれることが多いようだ。仏岩ポケットパークと駐車場があり、仏岩トンネルが開鑿されている。仏岩越を起点として、阿能川岳、小出俣山、十二社ノ峰を周回した。寮がある湯桧曽川流域の山脈は馬蹄の形をしていることから通称馬蹄形と呼ばれているが、小出俣川流域の山脈も小さな馬蹄形をしている。登山道はないため積雪期残雪期に歩かれている。
平成31年3月23日から3月25日までの登山記録(仏岩越~阿能川岳~小出俣山~十二社ノ峰~川古温泉)柿沼恭介、打矢和之
車道から30分、緩やかに上り詰めると仏岩越 古くからの峠道には道標が立てられている 正面が阿能川岳に通じる尾根、登山道はないが踏まれている 昨日は積雪があり初冬のよう 踏痕をたどる。ヨシガ沢山周辺 藪をこぐところはない。ヨシガ沢山1,117m周辺 ヤママユガの繭 ヨシガ沢山の先で鉄塔が立ち視界が開ける。伐採され荒れた土地 踏み痕がなおも続く、緩やかに登っていく 鍋クウシ山へ向かう 幅が広く歩きやすい尾根、雪庇に注意 鍋クウシ山1,314mの手前、樹林の中で雪庇が割れる 天子山も通過 露岩があり小さなアップダウンがある 三岩山付近、樹林の中の小さなアップダウンを繰り返す 氷化したルンゼ状を5m下る 三岩山を過ぎると幅広い尾根となる 風が強くなってきた、阿能川岳に至る 阿能川岳南東尾根、水上寺まで続く 阿能川岳から小出俣山方面、右の尾根が登路 遠方右が吾妻耶山、三岩山への長い稜線 小出俣山の肩から阿能川岳方面を振り返る 小出俣山の肩から谷川乗越 強風の中の小出俣山山頂 小出俣山から三尾根岳、この先のコルで幕とする 雪庇は東側に張り出す、西側は灌木があり巻きやすい 三尾根岳手前1,650mのコル近く 雪庇と灌木の際を歩き続ける 小出俣山 小出俣山1749.1m 1,621mは尾根上に小岩峰があり、西側を巻く 松ホド山南側で幕とする
平成31年3月23日(土) 曇り 午後から強い西風
6:45仏岩駐車場~7:12仏岩峠~7:49ピーク1,236m~8:30鍋クウシ山1,314m~8:50天子山1,399m~9:30三岩山1,568m~10:40阿能川岳1,611m~12:45小出俣山1,749m~15:30三尾根岳東側コル1,650mテント泊
登山の起点は仏岩ポケットパークの看板からで、ザラメ雪の中を進むが登山道が判別できる程度の積雪であるため道を失わないように注意する。杉林の中のため目指す仏岩峠の位置が下からは分からない。30分で仏岩峠に立つ。吾妻耶山との分岐である。川古温泉へは落ち葉の中を峠道がゆるやかに下っている。峠には雪がなく踏跡が尾根伝いにあり藪をこぐことはない。鉄塔のあるピークで休憩する。送電線の周囲は木が伐採されており荒らされている。鉄塔から先は完全に雪で覆われようやく春山らしい雰囲気になってきた。幅の広い尾根がゆるやかに続いている。鍋クウシや天子山ははっきりと分からずに通過する。尾根が狭まり小さな露岩やアップダウンが出てくるのは三岩山である。松の根や枝が出ているので掴まるところは多く、ザイルを出すようなところはない。この山行では、ザイル、ハーネス等は持参していない。5m位のルンゼ状を下る場所があるが、根をしっかり掴みアイゼンを利かせれば問題なく下れる。三岩山を過ぎると尾根は再び幅広くなりゆるやかに伸びあがると阿能川岳である。阿能川岳は長稜であり北の端に小さな表札が掲げられている。南東に尾根が伸びており水上寺まで続いている。上部は十分に雪があるが水上寺付近はすでに雪が消えているので登山適期は過ぎている。今年は雪が少ない。
阿能川岳から小出俣山への尾根筋に入る。尾根は緩やかに続くが最後に傾斜が強くなり小出俣山の肩に出る。斜面では雪面にクラックが入り恐ろしく、北側の灌木帯に入る。灌木帯は安全である。小出俣山の肩からは谷川乗越と阿弥陀川が臨める。赤谷川はドウドウセン上部から阿弥陀川と名前を変えているが源流部は阿弥陀経の来世の如き美しさがある。
小出俣山の先から三尾根岳とのコルを目指す。雪庇は南側に張り出しており北側は灌木帯である。急な下りがあるが灌木帯に沿って下って行けば難しい処はない。強い寒気の影響で次第に天候が悪化し吹雪となる。三尾根岳東側コル1,650mに適当なテンバを見つけたので行動を終えた。
平成31年3月24日(日) 曇り 終日強い西風
13:00三尾根岳東側コル1,650m~13:35三尾根岳1,720m~ピーク1,621m~15:15松ホド山1,481mテント泊
朝から穏やかに晴れるはずが強い東風で地吹雪となっており、風が止むのを待つ。12:00になっても風が収まらないので行動を開始する。三尾根岳までは50mの登りで東側に雪庇が張り出している。三尾根岳から南南西に進路を変える。西尾根が出ているので視界が悪い時は注意が必要である。コンパスで現在地を確認する。雪庇は全て西側を巻き気味に下るが石楠花の灌木が多い。1,621mピークもあっさり西側から巻き下る。松ホド山まで来れば平坦な幅が広い尾根となりどこでもテンバとなりうる。松ホド山から100m程南へ歩き行動を終えた。
平成31年3月25日(月) 快晴 無風
7:30松ホド山~7:45十二社ノ峰~9:50林道~10:00川古温泉~11:00仏岩ポケットパーク(起点に戻る)
夜中に目が覚めると、月明かりでテントにぶなの枝の影がでていた。外は銀世界で仏岩越から阿能川岳の長い稜線が横たわっていた。6:00に起床し7:00発、15分後に十二社ノ峰に立つ。長年憧れてた十二社ノ峰に漸く立つことができた。十二社ノ峰からはコンパスを設定し真南へ下る。途中いくつも小尾根が派生しているがコンパスで南を指す尾根を下ればよい。最後に地形図の毛虫マークのある岩場があるので東側へ徐々に下り林道へ下りる。10分で川古温泉、一時間後に仏岩ポケットパーク(起点に戻る)へ。途中、富士浅間神社で無事の下山を感謝した。 踏高会 柿沼 恭介