コロナ禍で虹芝寮は閉鎖されている。気分転換で日本のロングトレイルの草分け信越トレイルを訪ねた。秋の平日は人が少なく、山小屋もなくテント泊で静かな3泊4日を過ごした。
2020年10月18日(日) 晴れのち曇り
都内~東京駅~北陸新幹線飯山駅~12:35飯山コミニュティバス~13:03斑尾ホテル前バス停~13:11-13:25リフト(片道800円)~14:00斑尾山(信越トレイル起点)~14:52万坂峠~15:06袴湿原~16:02袴岳~16:55赤池テントサイト
信越トレイルはまず専用マップを購入することから始まる。信越トレイルは、長野県と新潟県の境にある関田山脈の尾根沿いを縦走する約80㎞のロングトレイルで、平成17年に斑尾山から牧峠まで約50㎞が整備され、平成20年には天水山mで約30㎞が整備された。いつかはと思っていたが、今年は利根川や奈良俣川の沢登りが新型コロナウイルスや台風で中止になり欲求不満なところ、ちょうど秋晴れを狙っての単独行となった。北陸新幹線はくたか号を飯山駅で下車し、飯山コミニュティバスで斑尾高原ホテルへ向かう。13:03斑尾高原を出発する。ホテルの裏側に回るとスキー場と斑尾山が見える。マップだと高低差が分かりにくいが最初はレストランチロル方面に下っていく。今日は赤池までだが明るいうちに着けるか心配だった。仕事明けの午前中に都内を出ているため、斑尾高原出発が13時を過ぎている。リフトが動いているので遠慮なく利用する。信越トレイルの起点は斑尾山である。リフトを下りて約30分、14:00信越トレイル南の起点斑尾山に立つ。ブナの林を行くがスキー場の端を歩くことが多く木々が刈りはらわれている。道標が点々とありマップと参照しながら歩くと迷うことはない。これは終点までそうだった。道標のポイントを表す数とマップを参照しながら歩を進める。万坂峠はアスファルト道、車が通行している。袴湿原へ進み、袴岳、赤池へと下る。赤池遊森の館が赤池テントサイト水場、トイレとなっている。館から赤池沿いに行くとテントサイトである。看板が設置されており芝生のきれいなテントサイトである。
2020年10月19日(月) 晴れときどき曇り
5:53赤池テントサイト~5:56林道~6:14沼の原湿原~6:20沼の原湿原公衆トイレ~6:41生命の森植樹場所~6:59希望湖~7:03毛無山登山口~7:28毛無山頂上~8:48涌井~9:43富倉峠~9:57大将陣~11:20黒岩山~11:46熊ノ巣池~12:07桂池~12:16桂池テントサイト~13:50戸狩温泉スキー場~14:11とん平テントサイト(星降るキャンプ場)
秋は陽が短い。日の出が5:55、日の入りが17:02、薄明かりになるのをまって出発する。今年はブナの実が不作で熊が下界に下りてきて人がけがをして世間を騒がせている。早朝夕方は要注意である。赤池からすぐに林道を横断し沼の原湿原へ。ここは5月頃がミズバショウと残雪が美しいという。ぜひ家族と来てみたいところだ。毛無山への登り約30分、景色がいいところがある。ちょうど雲海をみることができた。毛無山から畑の中の道を下り、水場があるはずだが水がなく、小さな川で補充する。しばらく行くと涌井である。ここから民家の横を通って富倉峠へ登る。富倉峠は昔の石積が残されている。信州側の集落では越後から嫁をもらうことを誇りとし、働き者の越後女性が大勢嫁入りしたとマップにあった。越後から塩、米、酒、楮が運ばれ峠で受け渡しがされていた。しばらく林道を行く。黒岩山近くで林道がなくなりブナの美しい登山道を行く。熊ノ巣池を過ぎるとほどなくして桂池である。ここは幻想的な雰囲気。桂池テントサイトは2段の芝生でコンクリートの避難小屋もある。扉はないが中には丸テーブル、旅人ノートとクーラーボックスが置かれていた。泊まりたくなるが先を急ぐ。ここからとん平まではそう遠くない。ブナの美しい林、だいたい平たんな道を行くとスキー場の上部に出た。スキー場内を下り駐車場、大きな建物(スキー場のレストラン)の隣のとん平テントサイトで宿泊する。ここも静かでいいところ、空が開けているので冬の星座がよく見えた。来てよかったな。
2020年10月20日(火) 雨のち晴れ
5:45とん平テントサイト発~6:45小沢峠~8:07鍋倉山頂~8:28久々野峠~8:36黒倉山頂~9:17関田峠~10:22牧ノ小池~10:39牧峠~11:26花立山~11:56宇津ノ俣峠~12:35幻の池~13:51伏野峠~14:32須川峠~16:19野々海峠~16:59野々海峠テントサイト
薄明かりの中出発する。とん平テントサイトから目の前のリフトの下を通って林道に至り、そこから山道に入る。山道はしばらくトラバース、沢筋を詰めて尾根にあがる。小沢峠まで1時間。けっこう遠いと感じたがブナの大きな木があり癒される。小沢峠~鍋倉山~関田峠は信越トレイルのハイライトであった。ブナのトンネル、開ける視界、明るい紅葉の尾根歩き、どれも素晴らしい。残雪期にまた訪れたいところだ。小雨だったが晴れてきた。紅葉が風でからからと音を立てて落ちる。関田峠は駐車場や石碑があるおおきな峠。ここから牧峠までは木をまたいだりくぐることが多い。牧峠は瞽女が越えていった峠と言われている。水上勉「はなれ瞽女おりん」を思い出す。瞽女が通った道か。花立山を過ぎ急な坂を下ると宇津ノ俣峠であった。ここはほんの小さな鞍部になっている。小さなアップダウンとぬかるみ道で疲れてきた。先はまだ長い。マップは頻繁にみるのでポケットに入れておくとよい。伏野峠からは左手に菱ヶ岳がかっこよい。足を上げるのがきつくなる頃、野々海峠に立つ。ここから30分アスファルト道を下ると今日のテント場、野々海峠テントサイトである。ブナの林と湿原と池がある神秘的な場所だった。時刻は16:59、日没近く。今日は11時間行動した。途中、伏野峠ではクーラーボックスがありミネラルウォーターが入れてあった。水を心配してトレイルエンジェルの方々である。ほんとうに頭が下がる。低山だから夏は暑く、水の補給が縦走の肝になってくると思う。
2020年10月21日(水) 晴れ
5:45野々海峠テントサイト~6:00深坂峠~6:23三方岳~7:11天水山~9:00栄村口~9:59森宮野原駅~バス~越後湯沢駅~大宮~帰京
野々海峠テントサイトからアスファルト道を約15分程度で深坂峠近くまで到着する。涼しくて気持ちがいい。三方岳までは意外と近い。天水山が最後の頂上である。ブナの山頂でいいところ、北の起点である。信越トレイルは3泊4日の素晴らしい旅だった。感慨にふけりながらゆっくりと栄村口に下る。途中本線ルートと森のルートと道が分かれる。本線ルートを歩いたが途中から林道歩きになったので、森のルートがいいかもしれない。途中で本線と合流するとのことだったが、合流地点は分からなかった。車の走る音が聞こえてくると国道117号である。森宮野原駅まではすぐである。5泊6日で歩けると一日の行動が5~6時間でかなりゆとりが生まれる。マップに「世界一の山脈 関田山脈:南木 均著」が抜粋で紹介されていた。関田山脈に興味を持ったので読んでみたい。